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私が初めて『やまなみ工房』の作家の皆さんや作品と出会ったのは今から5年ほど前のことです。
「目・目・鼻・口」と合言葉のように繰り返しながら、ただ真っ直ぐに粘土に顔を描き続ける人。キャンバスいっぱいに描かれた、虫眼鏡で見ないとわからないほど、小さなイラスト。「障がい」とか「アート」とか難しいことはよくわからないけれど、「なにこれ?すごくかっこいい」と圧倒されたことだけは鮮明に覚えています。
そしてこの度、春と秋、4回のオアシス21でのMARKETのビジュアルを、やまなみ工房の4名の作家さんにお願いすることになりました。
ユニークで、思わず笑ってしまったり「なんだこれは」と息を呑んだり、人にとって感じ方や捉え方も違うと思います。その違いすらも楽しんで、世代、人種、枠組み、概念、障がい、人を隔てる境界線を一旦置いて、年4回、表情の変わるビジュアルを楽しんでみてください。
『やまなみ工房』の作家さんの手がける作品むちゃくちゃかっこいいです。
『やまなみ工房』について
滋賀県甲賀市にある福祉事業所『やまなみ工房』には、数多くの作家(利用者さん)が在籍します。墨汁に浸した割り箸を片手に、寝そべって人物を描く人。1日のうちに2分だけ、クレヨンで線を書く人。お気に入りのビビットピンクのウィッグを頭に、大好きな歌を口ずさみながらボタンを縫い付ける人。同じ形の手のひらサイズの地蔵を、10万体以上作る人。筆を取る理由も、作品をつくるタイミングも、「絵を描くことが好きかどうか」でさえも人それぞれ違います。ただ、「好き」という気持ちに、自分に真っ直ぐな、作家さん自身の魅力が、作品のパワーが、誰かの心を温めてくれたらといいなと思います。
SOCIAL TOWER MERKET
スタッフ 榊原ひより
作家プロフィール
[NOVEMBER]
岡元 俊雄 OKAMOTO TOSHIO
1978年生まれ 滋賀県在住 1996年から『やまなみ工房』に所属 トラックが大好きな彼が、ある時からドライブ中に見た車を絵や陶土で表現するようになった。現在ではトラックに限らず、人物や風景画等、雑誌や画集をモチーフに墨汁と割り箸1本のみを使用して次々に作品を生み出してゆく。モチーフ全体を見ながら素早く筆を走らせ全体像を描き上げると、描いた線上を流れに添って何度も何度も塗り重ねる。飛び散った墨汁の滴や擦れ合わさった線が絵に躍動感をあたえていく。いつも、ひとりお気に入りの音楽を聴きながら、寝転がり肩肘付いて描く様が、彼のスタイルである。
[DECEMBER]
鎌江 一美 KAMAE KAZUMI
1966年生まれ 滋賀県在住 1985年から『やまなみ工房』に所属 思いを人に伝えるのが苦手な彼女は、コミュニケーションのツールとして振り向いて欲しい人の立体を作り続けている。モデルはすべて思いを寄せる男性。最初に題材を決め、原形を整えると、その表面全てを細かい米粒状の陶土を丹念に埋め込んでいく。完成までに大きな作品では約2か月以上を要する事もあり、無数の粒は作品全体を覆い尽くし様々な形に変化を遂げていく。大好きな人に認めてほしい。今もなお、その思いが彼女の創作に向かう全てである。
[APRIL]
森田郷士 MORITA SATOSHI
1978年生まれ 滋賀県在住 1997年から『やまなみ工房』に所属
画集や図鑑から描くものを探し出し、構成を考えながら鉛筆で下描きをすると、その後は黒のボールペンでたくさんの点と線を使いモチーフを塗り込んでいく。その手の動きには迷いがなく、衝動的に描いている様にも見えるが、単調にならぬ様場所によって描き込みの密度に変化をつけており、緻密な点と線は重なり合い陰影を作りながら構成されていく。モチーフの中で影のように蠢く黒い点と線は平面的でありながら、今にも動き出しそうである。
[MAY]
上土橋勇樹 KAMITSUCHIBASHI YUKI
2001年生まれ 2020年から『やまなみ工房』に所属
絵画を始めたのは3歳頃、最初は英語を描き始め、様々なフォントに興味を持つ。 拳を握るようにペンを持ち描かれる文字列は、その直線と曲線の書体からカリグラフィーを連想させるが、作品毎に雰囲気は異なり、時にはコマ割りの中に文字と人物が登場し、彼の頭の中の世界が表出されている。 自身の座席とパーソナルスペースを行き来し、文字を描いては席を離れ、身体をバレエダンサーのピルエットのように回転させては再び席に着いて文字を紡いでいる。 小学1年よりパソコンに興味を示し触り始める。自宅ではキーボードとマウスを使用し、複数のパソコンソフトを使い分けグラフィックデザインを行なっている。
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