MARKETや街で今気になる人に話を聞く「PEOPLE」第6回は、毎年恒例となったSOCIAL CASTLE MARKET@名古屋城「YANGGAO×LIVERARY エリア」でもお馴染み「YANGGAO(ヤンガオ)」店主の村松和昌(MOOLA)さんと佳世さんに浄心にあるお店でお話をうかがいました。
― ヤンガオさんにはいろいろな場面でお世話になっていますが、初めて出店いただいたのはいつでしたかね?
MOOLAさん(以下、M):テレビ塔の下でSOCIAL TOWER MARKETが開催されていた、たしか2017年の秋頃、LIVERARYエリアで出店しました。まだお店のオープン前だったので、個人で出店してタイで買付けた古着なんかを販売していました。それから毎年出店していますね。
― いつもありがとうございます!今回は改めてお二人のルーツやこれまでのことなどを聞かせてください。
M:僕の生まれは名古屋です。父親が警察官で勤務地の移動が定期的にあったので、幼少期は各地を転々として、学生時代は岐阜県の多治見市で暮らしていました。実は、親戚もみんな警察官でわりと硬めの家系なんです。警察官になるという流れは僕で途絶えたんですけどね(笑)
佳世さん(以下、K):警察官家系なだけあってか、私よりも安全運転なんですよ(笑)
M:大学は名古屋造形大学で工芸デザインを専攻し、シルクデザインなどを学んでいました。学生時代はMacでクラブのフライヤーを作ったり、とても楽しかったですね。将来は漠然と自分の興味のあるデザイン関係の仕事につけたらな〜と考えていました。
― 音楽やカルチャーなどに興味を持たれたきっかけを教えてください。
実は、中学生の頃くらいから好きなもの、あまり変わっていないんですよ。僕の場合、雑誌の影響が大きくて。当時だと「asayan」や「CUTIE」の後ろの方のページで藤原ヒロシさんが連載していたファッションやカルチャーなどを紹介したコラムと同時にみうらじゅんさんのコラムがあったりして、雑誌の雑多な情報を一気に摂取する事が面白くて。インターネット黎明期だったので先輩がスクラップした過去の資料も見たりしていましたね。今好きなものは、その頃の好きだったカルチャーからの広がりのように感じます。音楽にしても、パンクとレゲエやヒップホップが繋がっていたりすることを体感する事によって自分の好きなファッション〜音楽〜カルチャーが繋がっていく感覚が、当時の僕にはとても新鮮で面白かったんですよね。
― ヤンガオさんといえばタイのカルチャーも魅力のひとつだと思うのですが、それも昔からお好きなんですか?
M:いえ。むしろ、タイはネガティブなイメージの方が強かったですね(笑)大学卒業後、デザイン会社で働いていたのですが、タイに支店があり僕はそっちに行くことになったんです。正直、はじめは「まじか」っていう感じでしたね。でも、現地に行ってタイの印象が180度変わったんです。
― どんなふうに変わったのでしょう?
M:たまたま僕の職場のあった周辺が、ミュージシャンやDJ、ファッション関係者などクリエイティブな人が多くいる場所だったんです。ある時、道を歩いていると「DJとかやれる?」って突然声をかけられたので「DJができるくらいのレコードは日本から持って来てるよ」と答えたら、その方のミュージックバーで毎週のようにDJをやることになって(笑)日本人は僕だけだったと思います。でも、それがきっかけで、平日はデザインの仕事をしながら、休日は現地の方に混ざってDJする生活がはじまったんです。それがとても刺激的で楽しくて「タイいいじゃん!」って。タイでの生活が3年目になるときに結婚して、佳世も一緒に暮らすようになりました。
― 佳世さんは結婚してタイへ移住することになったのですね。タイに行くことに躊躇したりはなかったですか?
K:前職で世界各国を回ったりしていたのもあり、まったくなかったですね。
― 佳世さんのこれまでのお話も聞かせてください。
K:私は小学2年生までは稲沢市で暮らしていました。その後、祖母の家に引っ越すことになり名古屋の浄心へ。大学は名古屋造形大学で、産業工芸デザインを専攻していて、MOOLAとはその頃からの付き合いです。大学卒業後はデザイン関係の仕事をしたいなと思い就職活動をしていたのですが、なかなかピンとくる会社がなくて。そんな時に、当時好きだった雑誌「relax」などで東京の「Landscape Products(以下 Landscape)」の存在を知りました。家具の会社なのですが、ファッションの企画展なんかもあったり幅広くやられていて、知れば知るほど興味が湧いてきてしまい、ダメもとでお店に行ってみようと東京の千駄ヶ谷にあったLandscapeのお店「Playmountain」に行きました。そこで、店長さんに「スタッフの募集はありませんか?」と尋ねたんです。
― Landscapeさんは、当時もすごく人気だったと思いますが、すぐ採用されたのですか?
K:いえいえ。当時のLandscapeは、会社の規模も今より小さく募集はしていませんでした。でも、店長さんが「履歴書を送ってくれたら見るよ」と言ってくれたので、名古屋に戻り履歴書を用意し、再び東京のお店に直接渡しに行きました。
― 郵送ではなく自ら届けるとは。働きたい意欲を感じてもらえたでしょうね。
K:その後しばらくは連絡なかったのですが、大学4年生の冬頃に連絡があり「正社員の募集ではないけど、3ヶ月間だけお台場でイベントをやることになったので、東京に来て手伝わないですか?」と声をかけてもらいました。他の会社で働く道もあったかもしれませんが、私は3ヶ月でもいいから憧れの会社で働いてみたいと、上京することを決めました。
3ヶ月間のイベントのお手伝いが終わる頃、会社の体制が変り継続して働かせていただけることになりました。そこから8年程在籍していました。主にお店の運営業務やオリジナル商品の企画などを行なっていましたね。代表の中原さんとも一緒に世界を見て回る機会も多く、その経験や繋がりは今も宝物です。なので、タイに移住することに対してもなんの躊躇もなかったです。実際、タイでの暮らしは楽しくて、名古屋に帰る予定もありませんでした。きっとこのままタイで暮らすんだろうなと思ってましたね。
― では、何がきっかけで帰国することになったのですか?
K:私がタイで暮らして3年ほど経った頃だったと思います。MOOLAの仕事で事務所の場所を引っ越して1Fを店舗、2Fをギャラリー兼事務所にしようという計画が出た頃、私の父の具合が悪くなってしまいました。それがこれからのことを考えるきっかけにもなりMOOLAから「日本に戻ろうか?」と言ってもらいました。
M:タイの事務所の移転計画にも興味がありいろいろ迷いましたが、そのタイミングで日本に帰ってお店をやることを決めました。
― それは現在ようなカレー屋さんをイメージしていたのですか?タイカレーの作り方はいつ学んだのですか?
M:漠然と飲食とカルチャー的なものがある場をつくりたいなとは思っていました。タイカレーは、僕のタイの友人のお母さんの友人のお家に通いながら教わっていたんです。
― え〜っと。なかなかのご縁のご縁ですね(笑)
M:今のヤンガオのカレーの師匠です。で、まずは一時帰国をしようと日本に帰ったのが2017年で、その時に古くからの友人のLIVERARYの武部くんから「出店しない?」と声をかけてもらい初めて出店したのが、SOCIAL TOWER MARKETでした。それから本格的にお店の物件を探し始め、その半年後ぐらいにはオープンしていましたね(笑)
― すごいスピード感。はじめから浄心あたりで物件を探していたのですか?
K:いえ。はじめは大須や栄で探していました。でも、なかなかいい場所がなくて頭を抱えていた時に、家の近くの浄心でも探してみたら今のビルに出会ったんです。駅から近いし、二人でやるにはちょうどいい広さで。オフィスビルで長らく空いていたこともあって「飲食もOK。天井も抜いていいよ」と言ってもらって。お店はMOOLAのデザインをベースに、Landscapeのチームにも手伝ってもらいながら作っていきました。とはいえ、お店がオフィスビルの3Fなので、当時担当してくださった大工さんがすごく心配して「壁壊しちゃうよ?やめるなら今だよ?」って何度も聞かれたりしましたね(笑)
― 私も初めてお店に来て階段を上がる時「ほんとにここなの?」とちょっとドキドキしました(笑)オープン当初から今のような人気だったのですか?
M:ぜんぜんです。はじめはお店の営業時間もどうしたらいいかわからなかったので、昼から夜中までロングランでやってました。誰もいない時間もあったり、夜はお店の空間が気持ち良いのか寝てる人もいましたね(笑)オープンして3ヶ月ぐらい経った頃、雑誌の「POPEYE」が取材してくれたんです。それが掲載されたぐらいから遠方からもお客さんが来るようになりましたね。
― ヤンガオさんはいつも賑わっているイメージがありますが、そんな時期もあったのですね。店名の「YANGGAO」の名前の由来をお聞きしてもいいですか?
K:タイ語で「いつも通り。相変わらず」みたいな意味です。はじめは「ヤンガオ」ではなく似た意味の「クーガオ」という名前にする予定でした。これは辞書に載っているような言葉ではなくて、昔の流行り言葉のようなものです。MOOLAの好きなタイのバンドSrirajah Rockersの曲名から来ています。
M:でも「クーガオ」って響き強めじゃないですか。◯◯◯戦隊「クーガオ!」みたいな(笑)それでタイの友人に相談をしたところ、似た意味で響もよい「ヤンガオ」という言葉を紹介してもらったんです。それが今の店名の由来です。
― 「いつも通り」っていいですね。お店でMOOLAさんや佳世さんがいつも通り笑顔で迎えてくれると嬉しくなります。あと、常に入れ替わるアパレルや雑貨などのオリジナルグッズも魅力のひとつですが、これらはいつ考えられているのですか?
M:10代の頃から色々作りたかったけど“自分の店がなきゃ意味がない”と思ってて、ずっと我慢してなので7年目の今でも製作意欲は爆発中です。朝6時くらいに起きて、犬の散歩中やカレーの仕込みしながら、習慣的にどんな物を作ろうか考えています。僕自身、モノやお土産が好きなんです。基本的に同じものは作らず、イベントなどでは、お客さんに喜んでほしいので新作を出せるようにしています。
― 今年のMARKETでも新作グッズはありますか?
M:もちろん、新作ありますよ。あと、昨年、即完売した韓国・釜山の「SOUND SHOP balansa」とのコラボグッズも。それと今年は、子供も参加できるniko and…とstudio VIICONによる「スペシャルワークショップ」の新企画もあります。うまくいけばいいな〜と僕たちもドキドキしています。
― 今年もいろいろ盛り上がりそうですね!楽しみにしています。ところで、お二人は今後やりたいことや目標みたいなものはありますか?
M:そうですね〜。これまで通り、夫婦二人で楽しく続けていけたらそれでいいです。「夫婦二人で無理なく楽しくやる」この考えはお店をスタートした時から大切にしているんです。
― ありがとうございます。いろいろ聞きたかったことが聞けました。これからもお二人のヤンガオな活躍を楽しみにしています!最後に、名古屋でよく行くお店や場所があったら教えてください。
K:西区の「万楽」ですね。ここは中休みがないのでランチ営業の後などにふらっと行きます。飽きのこない味でとても美味しいですよ。
M:僕はディスクユニオン、Face Records、Greatest Hits、Music First、バナナレコードなど、中古レコード店に行くのがやっぱり大好きですね。新譜はオンラインで。レコードを買って聞いたことがない音楽に触れる事が何よりもリラックスになり、モチベーションを上げてくれます。
YANGGAO
愛知県名古屋市西区花の木3-13-23 クレスト浄心 303
◎Instagram
※営業日は公式インスタグラムでご確認ください
→「PEOPLE」掲載リスト一覧を見る
Text:Hiyori Sakakibara(THE SOCIAL)
Photo:Eri Yamamoto(THE SOCIAL)
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