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2024年08月19日
【PEOPLE】“建物にも多様性や個性があっていい” 野口夏美 / noma [不動産屋]
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MARKETや街で今気になる人に話を聞く「PEOPLE」第3回は、渋くて味わいのある店舗物件などを紹介しているインスタも話題の不動産屋「noma(ノマ)」の野口夏美さんにお話をうかがいました。



― いつも楽しくインスタ拝見しています。野口さん目線の物件おすすめポイント(この壁のタイル好き、隣の店のこれ美味しいなど)がイメージ膨らみますね。
そう言ってもらえると嬉しいです。物件を探している人は、間取りや外観内観だけでなく具体的な特徴や周辺の街の情報なども知りたいだろうなとメモ的に書いてます。

― 不動産業をはじめられたきっかけを教えてください。
私は静岡県の御殿場の出身で名古屋に来たのは5年ほど前です。陶器を作る人になりたくて、瀬戸市にある窯業訓練校に行くために愛知県に来ました。陶芸の勉強はとても楽しかったのですが、100均で陶器が買える今の時代、就職を考えた時に厳しい部分もあり、陶芸は趣味にしてお金を稼げる仕事をしようと住宅系賃貸の不動産仲介会社で働くことを決めたのがはじまりです。

― やりたいこととお金のバランス難しいですね。不動産のお仕事はいかがでしたか?
宅建の資格も取得しガッツリ働いて稼げましたね(笑)歩合制だったのもあり毎月売上目標を達成するように頑張っていたら気づけば主任にもなっていました。でも、仕事と向き合う中で葛藤もあって・・・。

― どんな葛藤があったのですか?
不動産仲介の仕事って、お客さんといっしょに物件を見て回ったりする時、長いと半日とか行動を共にするんです。そうすると意気投合したりして仲良くなって呑みに行ったりするタイプなんです私。今でも「なつみちゃん、呑みにいこ〜」って誘ってくれる当時のお客さんがいます。むちゃくちゃ嬉しいですね。そんな大切なお客さんたちには、心の底から気に入ったところで暮らしてほしい。でも、会社に属している以上は毎月一定の売上を目指さなければいけなくて、お客さんに寄り添ってゆっくり物件探しにお付き合いすることができないモヤモヤがあって・・・。

― なるほど。お客さんにもっと寄り添いたい気持ちになったのですね。
そんな時期に廃校した小学校を再生したベンチャー企業などが集まる施設「なごのキャンパス」にオフィスがあるお客さんの家を仲介しました。内見が終わった後、オフィスまでお送りする際に「よかったら職場見て行く?」とお誘いいただき、なごやのキャンパスを案内してもらいました。そこでは、自分と同年代くらいの若い方も独立してイキイキと働いていて、その姿を見た時に、パッと自分の今後進みたい道が広がったんです。あ、私も独立したいんだって。

― きっとそのお客さんも野口さんを気に入ったから案内されたのでしょうね。
3年ほど不動産で働いているうちに、自分の好きな物件の傾向もわかってくるようになりました。私は新しい物件よりも、古い物件の方が好きです。今の世の中、古い建物って壊して更地にするという流れは多いです。でもそれが一概に良いとは思えなくて。今ある良い物件は、なるべく丁寧に大切に使っていけたらいいのではないかと考えています。前の借主のお店の造作が残っていたとしても、そこに価値があることもあるのではないかと。全部同じではなくて、建物にも多様性や個性があっていいと思うのです。そして、そんな個性ある物件が良い人に渡るともっと魅力的になっていくことも知っています。私がその橋渡しをできたらいいなって。

― たしかに。新しい建物は似たようなものが多いように感じますね。独立されてからは店舗物件が多いのですか?
そうですね。建物やお店を通して人との繋がりができていくことが大好きなんです。自分が携わったところが、街で愛されるお店となる。そして、そこで自分もご飯を食べ、お酒を呑み、時間を過ごすことができる。お店ができる前からできた後の過程まで見ることができるのがやりがいですね。

― お店で喜んでいる人たちを見ながら食事するのは格別でしょうね。独立してお仕事は順調にいきましたか?
独立した当初は、Vinofonicaという飲食店でアルバイトもしていました。そのお店が移転してParadaise Natureとしてリニューアルする時のお店の仲介も担当させてもらいました。いろいろな人とのご縁で徐々に不動産の仕事も増えていきましたね。個人的にも大好きで応援したいと思うお店に携われること、そして、これからもそんな出会いがたくさんあると思うと、とっても楽しみです。

― たくさんのご縁がありそうで楽しみですね。野口さんがアテンドした物件を見てみたいのですがお願いできますか?
わかりました!いくつかお店をご案内させていただきますね。



Case1:花の仲卸市場を新しいカタチで活用する
大須観音から徒歩5分の場所にある「MATO OBJECTS STORE」開放感のある明るい店内には、店主の的山さんがセレクトした作り手のこだわりを感じる陶器や生活雑貨などが並んでいます。




他では見かけないような個性的で愛らしいモノがいっぱいの店内。2Fの空間も素敵でした。

的山さん(以下、的山):元々、アパレルで働いていて独立しようと決めた時に、知り合いから野口さんのことを紹介してもらったんです。名古屋でフリーで古い物件をメインにした不動産をやっている子がいるよって。僕自身、その街に昔からある雰囲気を大切にしているような古い建物が好きで。直接お会いしてお話をさせてもらった時に「この方なら一緒に探してくれそうだ」と思ったのを覚えています。

野口さん(以下、野口):嬉しい〜。はじめは千種区あたりで探していたのですが、なかなかいい物件がなく、的山さんから昔住んでいた松原に良さそうな物件(フラワーセンター)があるから詳細を調べてほしいと連絡もらったんです。それで、オーナーさんとやりとりして話が進んでいきました。ここはフラワーセンターを含む花き市場なのですが、港区に新しい花き市場ができ移転する店舗もいるなか松原に残ると決めた方々がいらっしゃいます。なので、朝は花市場であることもあり、人の流れがあり活気があります。昼以降はどちらかというと静かで落ち着いているエリアですね。





的山:朝の活気のある雰囲気も好きですね。でも、にぎわいがある誰でもわかるような場所というよりは、ここを目当てに来てもらえるような場所にお店を持ちたくて。なので、昼以降の落ち着いた雰囲気も気に入っています。

野口:この建物の使い方は従来通り花の仲卸市場であったり倉庫として活用される方が多かったです。なので、昼以降、人の通りはあまりなくて。でも、建物のオーナーさんの思いとしては「古い建物を大切にしながらも人の流れる場所にしたい」と。MATOさんが来店のあるお店として入り新しいカタチができたのではないかと思っています。オーナーさんも喜ばれていました。


当時のエピソードを楽しそうに話されるおふたりのよい関係性が感じられて微笑ましい。

オーナーさんとの関係性や理解があってこそできる取り組み。従来の使い方や文化も残しつつ、新しい活用もはじまり、近く古着屋さんも入るそうです。これから新しいカルチャーが生まれるエリアになりそうで要注目です。

Case2:自分も絶対行きたいお店に携わる
千種駅から少し歩いたところにある「ZEZE」作曲家のRamzaさんとダンサー舞さんによる美味しいご飯とお酒とGOOD MUSICが楽しめる空間。





野口:最初は、インスタのダイレクトメッセージに舞さんから連絡があったんです。「お店を作りたくて場所を探している」って。そして内見がてらヒアリングをするためにお会いしたのが最初です。

舞さん(以下、舞):そうそう。知り合いに相談したら「名古屋で面白い物件を紹介している人がいるよ」って、野口さんのことを教えていただいて。

野口:それで、実際にお会いした時に、一目惚れしたんです(笑)普通に生きていたらなかなか出会えないような方達じゃないですか。でも、お店ができたら、いつでもお二人に会える。私も絶対に通いたいなって。自分が行きたいと思う店を作る工程の中に携わらせてもらえたこと、本当に嬉しかったです。



Ramzaさん(以下、Ramza):はじめはもう少し違う場所で探していました。でも、なかなか見つからなくて。そんな時、nomaさんから「この物件すごくいいと思うんです」っていう連絡が来て。とはいえ、最初にここを内見した時は、本当にこの場所でやっていけるの?と不安でした(笑)

野口:元々は和風スナックのようなお店の居抜きだったんです。今の店内のように打ちっぱなしの壁面でもなく、雰囲気も全然違いました。でも、私の中でこの街でお店をやってほしいという気持ちがありましたね(笑)

Ramza:最初は不安だったものの店内の壁を減らしたり壁紙を剥がしてみたら想像の100倍以上よくて!さすがのnomaさんの決めうちでした。あと、今池など主要な街から自転車で来れるくらいの距離感と落ち着いている街の雰囲気も気に入っています。

野口:ZEZEさんがここでお店をはじめてこの場所が建物が格段に魅力的になりました。ここに来れば、お二人にも会えて美味しい料理にお酒、そして音楽も楽しめる。私の大好きな推しのお店です。


壁のドアを開けると赤い空間のお手洗い。ここでも音楽を楽しめる仕掛けが。

お二人と話している野口さんの嬉しそうな顔が印象的でした。お店も隅々までものすごくかっこよくて食事もお酒も音楽も最高の空間でした。

Case3:独立して初めて担当した特別で大切な場所
千種駅近くにある古い長屋の奥にひっそりとたたずむ「ぱうぜ」店主の加藤さんが大工仕事で半年がかりで作ったアットホームな唯一無二のお店。



加藤さん(以下、加藤):なっちゃん(野口さん)はここに移転する前のお店からのお客さんだったんだよね。

野口:そうそう。静岡から名古屋に引っ越してきたくらいだったと思います。知り合いの店主さんから最終着地点として紹介されたのが「ぱうぜ」だったんです。


80年代のサブカル系雑誌やレコードも楽しめる。オブジェのように飾られている腰を痛めた時に加藤さんが愛用していたコルセットがキュート。

加藤:その時からの付き合いだね。前の店を取り壊すことになって立退しなければならなくて。それで、なっちゃんに相談したんだよね。ちなみに、この店は4軒目で僕の集大成ですかね。

野口:独立して初めてのお店は絶対に「ぱうぜ」が良かったんです。「ぱうぜ」は私にとって大切な場所だったので。ここで加藤さんと乾杯しながら呑むビールが、時間が、本当に大好きです。




キッチンの壁に達筆な字で書かれたお品書き。小さすぎて見えない・・・(笑)

加藤:うちのビールはいつでもキンキンに冷えているからね。

野口:話しながらビールを呑んでいるといつの間にか酔っ払っていますね(笑)落ち着くんです。他で呑んでいても、最後はここに帰ってきたくなります。


瓶ビールを呑み交わす姿は、まるで仲の良い親子のよう。

「ぱうぜ」には、かつての店からの常連も多く訪れるといいます。お店の場所や形は変わっても、加藤さんの人柄に魅了される人たちが夜な夜な集まる素敵なお店でした。

― ご案内ありがとうございました!お客さんの気持ちや野口さんの考える不動産のカタチが少し見えた気がします。
それはよかったです。私のお客さんはリピーターの方が多くて、親元を離れる時、カップルになる時、家族を作っていく時、お店を始める時、人生において大切な何かのフェーズで都度相談いただいたりします。そんな関係を今後もずっと大切に続けていけたらいいなって思っています。屋号の「noma」は、何かと何かを繋げる仲介のような「〜の間(のま)」です。あと、漢字の「々(ノマ字点)」からきています。今はローマ字で「noma」にしていますがもう少し歳を重ねて渋さが出てきたら将来的には漢字にしたいですね(笑)

― 大切な時に寄り添ってくれる不動産屋をお客さんも求めていると思います。いつか物件探しの相談させてください!

― 最後に、野口さんが名古屋でよく行くお店や場所を教えてください。
公園や広場が好きで鶴舞公園は近所なのでよく行きます。必ず寄るのが亀のいる池で、亀がよく甲羅を干している岩があるのですが「今日は何匹上っているかな」と予想しながら見に行くのが楽しみ。ある日の亀は4匹が空の一方向を見つめていてバンドのジャケ写みたいになっていました。
あと、生きる化石と呼ばれているソテツという大きい植物が所々生えているのですが、フォルムが恐竜みたいで太古を感じれます。私が古い建物が好きなのと同じ理由で、洒落っ気やユーモアのあるものを気軽に見れる良いスポットです。

株式会社ノマ(noma)
◎Web
◎Instagram
【募集中】不動産経験者で一緒に活動していただける方を探されているそうです。ご興味のある方→株式会社ノマのお問合せから連絡してみてください。

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Text:Hiyori Sakakibara(THE SOCIAL)
Photo:Eri Yamamoto(THE SOCIAL)

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2024年08月05日
【PEOPLE】“固定概念にとらわれないで自由奔放に” クレシ預・沙織 / Boheme. [生花店]
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MARKETや街で今気になる人に話を聞く「PEOPLE」第2回は、MARKETの会場でもひときわ異彩を放ちお客さんの目を釘づけにしていつも賑わいが絶えない花屋「Boheme.(ボエム)」のクレシ預(あずか)さんと沙織さんに中村区にあるお店でお話をうかがいました。



― 実店舗もアート感あって素敵ですね。お店はいつオープンされたのですか?
預さん(以下、預):もうすぐ丸2年になります。地元がこのあたりで、空き家だった古民家をリノベーションしてお店にしました。壁や扉、カウンターや看板など自分たちで塗装したり絵を描いたりしています。


”QRAZY PoTs”コーナーは、好きな植物とポットが選べます。1点ものでどれもかわいい。

― お店をはじめる前はどこかの花屋さんで働かれていたのですか?
預:いいえ。実は、花屋で働いた経験はありません。巡り合わせというのでしょうか・・・。これまでの自分達の過去やひとつひとつの出来事を振り返ると花屋に導かれているような感覚がありました。点と点が繋がって線になるような感覚、とでもいうのでしょうか。これは花屋をやるしかないなと。



― どんな巡り合わせで花屋さんをはじめたのか、ぜひ教えてください。
預:もともとデザイン関係の仕事に就きたいなとはずっと思っていて。初めは、大学にいかずにファッションの専門学校を志望していました。親に反対されてしぶしぶ大学へ行ったのですが、そのおかげで、大手自動車メーカーに勤務する経験を得られたり、その後の転職先では経営コンサルの仕事につき、事業と事業を掛け合わせて相乗効果を狙う経営手法や日本の中小企業の課題についても学ぶことができました。
花屋をやろうかと考え始めた頃、花屋という業態にカフェやフォトグラフィなどの別事業を掛け合わせるという発想は、きっと経営コンサルの仕事を経験していなければ辿り着けなかったかもしれません。振り返ると、そんな業務経験もBoheme.にたどり着くための一つの「点」であって、デザインの仕事を諦めきれなかった経験も、親に専門学校への進学を反対された過去も、全てが「点」だったのだなと気付きました。

― なるほど。いろいろな経験や思いが今につながっているのですね。
コロナ禍でリモートワーク化が進み、削減された通勤時間で珈琲を淹れながら自宅で植物に水やりをする至福なひと時を噛み締めたサラリーマン時代の経験や身近に観葉植物を仕入れて販売するような人が現れ、仕入れルートについて運良く教えていただけたこと。偶然にも自分の地元に店舗として使用できる物件がタイミング良く空き家になったこと・・・。全てが「点」のように見えて、それらを繋いで線にしたら、Boheme.に辿り着いたって感じです。でも一番大きなきっかけは、コロナ禍で妻の沙織がカメラマンとして副業をスタートさせたことでした。



― 奥様の沙織さんがはじめるきっかけだったんですか?
沙織さん(以下、沙織):そうなんです。花屋というより最初はカメラマンになりたくて。元々、客室乗務員として働いていたのですが、コロナ禍で仕事が減ってしまったんです。そんな少しくすぶっていた時に自分たちの結婚式の前撮りを担当してくれた方々のカメラを通して1から世界観を作る姿がとても自由で楽しそう目に映りました。それで、私もカメラマンになりたいなと思い、2ヶ月後にはカメラを購入していました。

― コロナ禍だったからこそのそれぞれの衝動があったんですね。
沙織:これをやりたいと思ったら絶対にやるタイプなんですよね(笑)はじめは友人のマタニティフォトの撮影から始めました。撮影の中で、特に大切にしていたのがお花です。私たち二人とも色彩豊かなお花が大好きで、撮影でもそんなお花を使いたいと思っていました。でも、名古屋で自分たち好みのお花を多く取り扱っているお店になかなか出会えなくて、日々探し回っていました。1日に6店舗ほど探し回る日もありましたね。そのうちに、ほしい店がないなら自分たちで作ればいいやって思って「花屋をやらないか」と夫に相談しました。



― 色彩豊かなお花が並ぶ「Boheme.」の誕生秘話ですね。
預:お花だけじゃなくて花瓶もそんな感じでしたね。今、お店に並んでいるアンティーク花瓶はほぼ全て、アメリカから直接買い付けています。

― 個性的な花瓶はアメリカから買い付けていたんですね。
預:はじまりは、自分たちの結婚式でした。会場装飾で個性豊かなアンティークの花瓶をいっぱい使いたかったのですがレンタルするには高すぎて・・・。それなら、直接探して買った方が良いんじゃないかと。国内にはピンとくる花瓶がなかなかなくて海外のバイヤーやセラーをあたっていたところアメリカで見つけたんです。
いまや、アンティーク花瓶はBoheme.の強い個性を構成する重要な要素になってくれていますが、自分たちの結婚式の準備経験すらも「点」の一つになっていたなんて、自分でもビックリします(笑)今でもお店に並ぶ花瓶たちは当時のご縁を大切にアメリカから直接買い付けています。


様々な形や色の花瓶が並び、アンティーク以外にもお手頃なものも。どれも素敵で迷います。

― イメージを実現するための行動力すばらしいですね。でも、花はモノとは違い生き物なのでむずかしそうですが。
預:一般的には、何年か花屋で修行してから独立する方が多いと思います。でもそれでは感性やセンスが修行先の花屋に染まってしまう気がしていて。僕たちは何もわからない未経験の状態でのスタートでしたが、だからこそ自分たちの個性を存分に発揮できているのでは、と開き直っています。最初の頃はYouTubeで「お花の束ね方」って検索して一生懸命勉強していましたね。初めてお花を仕入れに市場に行った際も本当に緊張したのを覚えています。花市場での作法やルールなども知らなくて無礼を働いてしまったこともありました。市場の方に色々と教えていただきながらひとつひとつ身につけていきましたね。



― 今のおふたりから想像できませんね。びっくりです。
沙織:そんな時期に「マルシェに出たいな〜」って探していて見つけたのがSOCIAL TOWER MARKETでした。お店だと基本的にお客さんを待つ姿勢になるのですが、出店は自分たち発信で新しいお客さんにも見てもらえるチャンス。花屋がマルシェに出店する時って、実店舗とマルシェの2店舗営業で掛け持ちするところが多いと思います。でも、当時は0歳児の娘を抱えながら夫婦二人でお店を切り盛りしていたこともあり、2店舗営業はできないと諦めたんです。ところが物事は意外と捉え方次第で「いっそのこと実店舗は休みにして、MARKETに全集中しちゃおう!」という発想に切り替えると、色んなアイディアが浮かんできました。2店舗営業をする、という固定概念から切り離された途端、「3m×3mのテント下の小さな空間にBoheme.の世界観をギュッと詰め込めたら可愛いに決まっているし、お客様にも絶対に喜んでもらえる」という確信に変わったんです。
今でも出店させていただく度に、インスタのフォロワーが200人ぐらい増えます。マーケットに向かう日の朝は、ものすごい量のお花や花瓶を持っていくので運搬用のハイエースはパンパンになり大変なのですが、それでもやっぱり楽しくて。

― 大変でも楽しんでもらえて嬉しいです!ところで今は何か新しいチャレンジされてますか?
預:夏の風物詩がお店にあれば最高だなって、たぶん日本で初めて花屋としてかき氷をはじめました(笑)あと、お花のブーケに見立てたクレープがあったら面白いんじゃないかと思い、クレープ焼き機を導入しました。今はスタッフ総勢でクレープ生地の開発から始めています。そして、お店の奥には、観葉植物用の温室も作っていて、着々と準備を進めています。



― 温室がある花屋さんもめずらしいし、店内のカフェスペースで、コーヒー、かき氷、ゆくゆくはクレープもってすごいですね。
預:ずっと未完成のお店であり続けたいと思っています。屋号である「Boheme.(ボエム)」はフランス語で「自由奔放」という意味なんです。「花屋だったらこうだよね」っていう当たり前にとらわれたくなくて。凝り固まった固定概念を一旦置いて、自由に考えてみて、自分達の想いにまっすぐにチャレンジしたいし、お客様にもそうであってほしいと願っています。誰かの当たり前に合わせるんじゃない、固定概念に囚われない自由さを肯定する。これは僕たちが花屋を通して伝えたい、大切にしているメッセージです。自由奔放で複合的な僕たちの花屋を通して、人生を見つめ直すきっかけになってもらえれば嬉しいなと。


カフェスペースの奥に温室を準備中。沖縄などで買い付けした観葉植物など増えていくそう。


店内の花を眺めながら喫茶を楽しめます。娘の明ちゃんもおいしそうにかき氷食べてました。

― 人生を見つめ直すきっかけをつくる花屋「Boheme.」最高ですね。おふたりの気持ちが強く伝わってきます。
預:花屋って僕たちにとって伝えるための手段なんです。花を通して、当たり前だと思っていた人生観や価値観が「アレ?意外と違ったのかも?」と再認識してもらえたらいいなと。なので、まずは自分たちが自由な在り方を体現できればなって。実は、独立すると決めた時、妻のお腹の中には娘がいたんです。

― お子さまができたタイミングでの独立。よく決断できましたね。
預:周りからは「独立を諦めた方がいい」とか「先延ばしにした方がいい」といった声を多くいただきました。で、やっぱり、あと1年くらいは会社員を続けた方が良いのかなと思い妻に相談したんです。そうしたら妻から「私は(独立する)覚悟、決めてるよ」って。ハッとしました。子供が生まれたらチャレンジはできないと思っている人って多いと思うんです。気づかないうちに、僕自身もそんな固定概念に囚われている内のひとりになっていたんですよね。固定概念って自分では気付けない無意識レベルまで根付いているものなんだな、と認識できた良い経験でした。



― 普通はためらいますよね。奥様の覚悟と決断すごいですね。
沙織:娘が生まれた年にお店がオープンしたんです。最初は思ったように仕事ができないモヤモヤしていたこともありました。でも、その状況すら受け入れてしまったらすごく楽になって。できない時はできないからしょうがない。完璧にはできないかもしれない。でも、私ができないときは彼に頼む。彼が難しい時は私がやる。初めの方は、娘を保育園にも預けられなかったので、お店の中にベビーベットを置いて寝かせたり、起きている時には娘を抱っこしながらコーヒーを淹れたり、お花を束ねたりしていました。大変だと思っていることも、案外なんとかなります。それに、そんな時にしかできない経験や見れない娘の姿、貴重な光景ってたくさんありますよね。

― 大変そうでもやりたいことをあきらめない姿勢が大事ですね。
預:意外と諦めなくても人生なんとかなる、ということを0歳の娘から教わりましたね。掛け合わせ次第で、やりたいことはこれからもどんどん派生していくし、可能性も広がっていくのではないかと思っています。今は、自分たちが花屋を通して伝えたい想いを詰め込んだフラワーアートや空間の創作、店舗やイベントなどの花の装飾などしてみたいですね。自分たちの考えていることをギュウギュウに詰め込みたい(笑)



― 掛け合わせ次第で派生していく。どんな仕事でもできることですね。よい刺激もらいました!最後に、“名古屋でよくいくお店や場所”があったら教えてください。
沙織:中川区にあるmimodama_saunaです。ここのサウナはプライベートで借りれるので、水着を着て、お休みの日に夫婦でいくことが多いです。名古屋のサウナって、街中にあることが多いと思うんですけど、ここはおっきなお庭にどデカいミモザの木がうわっているんです。鳥の声や虫の音、緑や土の香りを感じながら、ぼーっとします。最高のリフレッシュですね。

― そんなサウナあるんですか!植物や自然とサウナの組み合わせいいですね。
預:あ、あと、サウナ繋がりでもう一つ!白山温泉。ここはやばいです。通常、サウナって3〜5セットくらいはしますよね。でも、ここは1セットでガツンとくるんです(笑)1回がとても深くて1度入ると30分くらいはぼーっとしてしまいますね。お店の近くにあるので、ぜひ行ってほしい。

― そんなガツンとくるんですか。ちょっとドキドキしますが今度行ってみます(笑)

Boheme.
愛知県名古屋市中村区十王町1‐4
営業時間:10:00~19:30 (土日祝〜19:00)
定休日:水・木
◎Instagram

→「PEOPLE」掲載リスト一覧を見る

Text:Hiyori Sakakibara(THE SOCIAL)
Photo:Eri Yamamoto(THE SOCIAL)

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2024年08月01日
「SOCIAL CASTLE MARKET2024@名古屋城」ボランティアスタッフ募集[受付終了]
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2012年に名古屋・栄のテレビ塔の公園からスタートした“SOCIAL TOWER PROJECT”は今年で13年目。コンセプトは「テレビ塔のある街に新しいかたちの社交場を」です。一昨年からは、もっと日常的な社交場を作ろうと”オアシス21″を会場に年4回のMARKET=社交場もスタートしました。
その中でも、毎年10月に開催する年1回の「SOCIAL CASTLE MARKET」は”名古屋城”を会場に、250店舗以上の出店者さんと
ご応募いただいた方にはLINEグループへの招待メールをお送りいたします。8/21(水)までにご参加ください。

【応募条件】
募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
年齢、性別、ボランティア経験などは問いません。参加日数の制限もありません。
連絡手段として”LINE”、説明会やミーティングでは”zoom”を使います。
それぞれのアプリのインストールをお願いします。

【活動期間】
SOCIAL CASTLE MARKET 2024
(会場:名古屋城)
2024/10/4(金)-10/7(月) 
※開催当日は10/5(土)・6(日)
活動日は基本的にマーケット当日とその前後の日程です。
マーケット開催前に参加可能な詳細日時を確認させていただきます。

【活動時間】
7:00頃~19:00頃
十分な休憩時間がありますので、休憩中にお客さんとしてマーケットを楽しんでいただけます。

【主な活動内】
・マーケット前日の設営作業
・マーケット当日の作業
(出店者さまのお手伝い/来場者さまのご案内、設営・撤去/車両誘導など)
・マーケット翌日の撤去作業
※いずれも経験は必要ありません。

【参加特典】
・SOCIAL CASTLE MARKET2024オリジナルスタッフTシャツプレゼント
・名古屋城への入場無料(通常大人500円):休憩時間に本丸御殿や庭園など、自由に見学できます

【お申込み後の流れ】
・8/19(月)|ボラスタ募集締切
・8/22(木)|ボラスタ説明会
・8/22(木)|シフトアンケート開始
・9/20(金)|シフト確定

【ボランティアスタッフ説明会について】
日時:8/22(木)19:30 – 20:30
場所:オンライン(ZOOM)
プロジェクトの活動趣旨や、マーケットの見どころ、具体的な活動内容、スケジュールなどをご説明します。ご都合のつく方はぜひご参加ください。
※上記のZOOM URLは、説明会当日までにLINEグループにお送りさせていただきます。
※説明会に参加できない方は、後日配信される動画にて確認をお願いします。



【ボランティアスタッフに参加した方の声】
出店者さんと話せたり良い出会いがたくさんありました / 普段出会うことのない人やいろいろな世代の方と関わることができて楽しかった / 知らなかった名古屋の魅力を知るきっかけになったり改めて名古屋おもしろい!と思うようになった / どういう形でマーケットが作り上げられているのか裏側を知ることができて良かった / いろいろなライフスタイルのスタッフに出会えて仲良くなれました



【出店者の皆さんの声】
初めての出店でわからない事が多い中、ボランティアの方々に助けていただきました/ 今年もスタッフさんのサポートのおかげで、ものすごく楽しめました/ 出店を通して多くの方と接することのできて貴重な機会となりました / スタッフさんのスムーズかつ丁寧な誘導のおかげで無事出店を終えられました / 安心して楽しく出店できたこと、搬入搬出ともにスムーズに作業できたこと、スタッフの皆様のお陰です。こんな素敵なイベントの一員として出店できたことを大変光栄に思います。

上記のお声は昨年のマーケットに関わってくださった沢山の言葉の中の一部です。もっとみんなが楽しめる”社交場”づくりを一緒に目指しましょう!
たくさんのご応募お待ちしております!



SOCIAL TOWER PROJECTの伝統?ある”テレビ塔”のポーズです(笑)

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